龍拳のストーリーとちょっとした感想
映画「唐山道場」は、復讐の物語を描きながら、人間の内面にある憎しみや怒りについて考えさせられる作品だ。主人公のホーエンは、かつて師匠のソウが敵のチュンに殺されたため、復讐を誓って龍拳を習得する。しかし、チュンの改心と、彼が自らの肉体を犠牲にして忍耐を説く武術を指導するようになったことを知り、むしろ混乱してしまう。このように、復讐の意義を問い直すことが、本作のテーマである。
また、作品は悪と善の二元論ではなく、人間の内面にある善悪や憎しみや怒りの複雑さを描いている。チュンがソウを襲ったのは、嫉妬に由来するものだった。しかし、自分の行動が妻の自殺につながってしまったことで、自らを責め、改心して忍耐を説くようになる。このように、人間の内面には、やり場のない怒りや悲しみがあることを示唆している。
さらに、作品は復讐の連鎖についても考えさせられる。ホーエンは、ソウのために復讐を果たそうとするが、ウェイ一家の策略によって、百忍道場の門弟たちから疎まれ、チュンの息子を殺した濡れ衣を着せられてしまう。こうしたことが起こるのは、過去の復讐によって、両者間に深い因縁ができあがっているためだ。復讐によって、さらに悪い状況を生み出してしまうことを示唆している。
本作は、武術映画としてのアクションシーンも充実しているが、それ以上に、人間の内面にある憎しみや怒りについて問いかける作品である。復讐を誓うことが必ずしも正しいことではなく、内面の怒りや悲しみをコントロールすることが大切であることを示唆している。これは、一般的な社会生活においても重要なことであると感じられる。
